RPAは大手企業や公官庁を中心に導入が進んでいて、最近では中小企業の導入も珍しくありません。
RPAのような業務自動化ツールの普及状況からは、少子高齢社会を迎え、いよいよ人材不足に備えて本格的に対策を行う企業の姿勢が見えてきます。「最近自社でもRPAを導入することになった」という方も少なくないでしょう。
そこで、改めてRPAとはなんなのか、またRPAに期待できる効果について整理し、人材不足の職場における業務効率化のヒントをまとめました。
「業務改善が思うように進まない」「RPAをせっかく導入したのに、効果が出ない」という方は、ぜひ最後までご覧ください。
ゼロからわかる!RPAと導入のコツ
「RPAとは?」「RPA導入を考えているけれど、どうすればいいのかわからない」といった方に向けて、わかりやすく解説した資料です。
RPAとは?
RPAとはRobotic Process Automationの略称で、「ロボットによる処理の自動化」を意味します。ソフトウェアロボットが、設定された通りに自動で作業を処理します。
普段行っている業務の手順をそのまま覚えさせる他、業務手順をソフト上で入力する方法もあります。
ソフト上で入力する場合も、よく使われる動作パーツ(「Excel操作(上書き保存)」など)があらかじめ多数用意されていて、ドラッグアンドドロップと一部値の変更だけで使用可能です。
RPAのイメージ動画(本日の日付を取得)
プログラミング知識がわずかしかなくてもロボットを作成できるため、わざわざ外部エンジニアを雇用しなくても業務自動化ツールを内製できる点がRPAの大きなメリットと言えるでしょう。
別途システム開発なども必要なくなる可能性もあり、業務効率化にかかる費用を抑えることが期待できます。
RPAが得意なこと・苦手なこととは?
残念ながらRPAはどんな業務も自動化するような、魔法のツールではありません。RPAには得意なこと、苦手なことがあります。
以下にRPAが得意なこと、苦手なことをまとめました。
RPAが得意なこと
●電子化(データ化)されている情報を扱うこと
●同じ動作を正確に繰り返すこと
●処理判断が明確な作業(正誤がはっきりしている。判断基準がマニュアル化されている)
RPAが苦手なこと
●考える過程が必要なこと(アイデア出しや分析結果の解釈など)
●判断基準が複雑なこと(一作業に対する後の判断が複数あるなど)
●マニュアル化できない作業(手順を守っても同じ結果にならない)
RPAは、繰り返し決まったことを実行するルーティンワークを得意としています。手作業だと間違うこともありますが、RPAは設定通りに動くため誤入力も大きく削減できます。
逆にRPAはアイデアを出したり、戦略を練ったりするような考える仕事は苦手です。よく聞くようになったAI(人工知能)は自分で学習して、イレギュラーな処理もできるようになっていくので、今後AI導入が広まればRPAと組み合わせることで、さらにさまざまな業務が自動化できるようになるでしょう。
具体的には、以下のような業務がRPAで自動化するのに向いていると言えます(全て一例)。
【総務】
・有給日数の管理
・社内ルールの周知・告知
・社内報告書・数値の整理
【経理】
・受発注業務
・契約書等の書類作成
・交通費など経費申請の内容確認
【営業】
・売上の集計
・顧客情報の入力
・営業報告書の作成
RPAの導入手順
RPA導入と業務効率化の関係を解説する前に、RPAを導入する流れを説明します。
以下の図はRPA導入の流れを表したものです。
RPA導入の流れ
図をご覧いただければわかるように、RPA導入は業務効率化を目的としたプロジェクトの、選択肢の一つです。
RPAは近年導入する企業が増えており「とりあえず自社でも導入してみよう」と考えてしまう企業もいますが、ツール導入ありきで考えると失敗のもとです。RPA導入より前に「どんな業務を効率化するのか」「それによってどんな効果を得たいか」を一度しっかり考えてみましょう。
ではあらためて、図の記載内容を解説します。
業務の洗い出しでは、さまざまな業務が自動化の候補として挙がるでしょう。全てを一度に自動化することは難しいので、優先順位をつけることになります。
見える化では、誰が見ても業務の工程がわかるようにします。プロセスマイニング※ツールを使用して可視化する方法もあります。
※プロセスマイニングとは、さまざまな業務活動のログを取得・分析する手法のこと。業務工程を可視化することで業務効率化の改善を図る。
標準化の段階で、誰がやっても同じ結果が得られるようにします。マニュアル化がこれにあたるでしょう。
標準化できたものを、改めてシステム開発するのか、アウトソーシングするのか、RPAで自動化するのかなど、どのような改善策を採るのかを検討します。
つまりRPA導入は、業務効率化・業務改善施策の一つなのです。
業務内容を見定めて、RPA導入が課題解決にベストだと判断すれば、RPAソフトを選定してトライアルを実施します。トライアルの結果から効果が認められれば本導入することになります。
RPA導入時は目的を明確にする
RPAを導入する際、とくに大事なことは「RPA導入の目的を明確にする」という点です。
「残業時間を●時間減らしたい」
「この業務の稼働時間を削減したい」
「人件費を●円分カットしたい」
目的はさまざまでしょうが、目的達成・課題解決するためのツールがRPAです。
「ロボットがどんな仕事もしてくれる」と考えて過剰に期待したり、逆に自分の仕事が奪われる、と危機感を抱いてしまったりする方も少なからず見られますが、そんなことはありません。
先述したように、RPAには得意なこと・苦手なことがあり、どんな業務も自動化することはできません。「RPAさえ導入すればいい」ということもありませんし「RPAで自分の仕事がなくなってしまう」ということもありません。
RPAはあくまでもツールとして、課題を解決するために導入・活用するものなのです。
RPA導入が業務効率化を促す理由とは
RPA導入において、まずは社内でどんな業務が滞りがちなのか、あるいはさらに効率化することで利益が出そうな業務がないかを突きつめる必要があります。
そこで大切になるのが、社内ヒアリングです。どんな業務に時間がかかっているのか、残業の要因となっているのはなんなのか、などを調査します。
実はこのRPAを導入する以前の段階で、業務を効率化できるきっかけが見つかる可能性があるのです。
「昔は必要だった確認も、今は形骸化しているだけ」
「これまで紙書類だったものをPDF化するだけで、ひと手間、ふた手間が減る」
「調査し始めると、別部署の業務と内容が被っていた…」
上記のような社内業務のムダに気づき、改善するのにRPA導入は良いタイミングと言えます。
先述したように、RPA導入は業務効率化・業務改善施策の一つ。業務効率化という広い視野から見ると、RPA導入前の段階から業務効率化が期待できるのです。
さらに、RPAは「データ化した情報」を「決まった動作」で「大量に繰り返し」取り扱うことが得意。そのため、RPAで代替可能な業務については、マニュアル化できる可能性が高いでしょう。マニュアル化すればRPA導入時もロボットの構築がスムーズですし、異動などでの業務引継ぎも簡潔にでき、業務の属人化防止も期待できます。
RPA導入で業務効率化するカギは、導入前の業務の棚卸しにあると言えます。
RPA導入のもう一つのカギは外部パートナー
こうした業務の棚卸しは、自社で行うことが難しいケースもあります。
ただでさえ人材不足によって業務過多な状況で、自社分析や社内ヒアリングを行うことは簡単ではないからです。そうした場合は、外部のコンサルタントやRPA導入企業に相談してみましょう。
「自社の業務改善は自社だけでやる」「自社のことを一番わかっているのは自社の人間」という考えがあることから、なかなか外部会社に業務コンサルティングを依頼することにハードルを感じることもあるかもしれません。たしかに人材が豊富な時代であれば、時間をかけて自社だけで改善を模索していくこともできたでしょう。
しかし、現在の日本企業が業務効率化を求められる背景は、少子高齢化による働き手の不足からです。人的リソースが十分でないのであれば、専門知識とノウハウを持つ外部パートナーに不足分を補ってもらう方が効率的でしょう。
どこまで自社で対応して、どこから外部の協力を仰ぐのか。こうした見極めが、業務効率化を促すもう一つのカギとなります。
RPA導入と同時に業務効率化した事例
それでは実際に、RPA導入で年4,800時間業務時間を削減して業務を効率化した事例をご紹介します。
RPA導入の相談をいただいたのは、地方民間病院。もともと院内の業務効率化を積極的に進められていましたが、さらに踏み込んだ改革ができないか、とロボフィスにご相談いただきました。
まずは情報システム部でRPA導入をトライアル。その際、効果を感じて複数部門でテストすることに。この際、ヒアリングを通してもっとも効果が高いと判断したのが「レセプト(診療報酬)請求内容の修正作業の自動化」です。
■課題
外来患者のレセプト請求データに、なんと月3,200件以上の修正が発生していて、毎月月初は修正作業で医事課担当者が残業しているとのことでした。
修正内容の多くは摘要内容※・傷病名の記載漏れ。また、ヒアリングを進めるにつれて、入力ルールが担当者と医師との間でしかわからず、属人化していることもわかりました。
※レセプトデータ内の摘要欄に記載された内容のこと。検査内容などが記入されている
■改善策
まずは頻出する修正パターンをまとめ、入力ルールをつくることにしました。入力ルールをまとめることでRPAがデータ修正できるようになり、データ修正作業を自動化。
RPAによる業務自動化と入力ルールの作成、そして入力ミスがなくなったことで確認時間も大幅に減り、年4,800時間を削減できました。
RPA導入前
RPA導入後
■改善まとめ
- 入力ルールの作成
- RPAによる自動化
▼ RPA導入
- 残業時間の削減。計4,800時間(年)を削減
- 人的ミスが減り、確認時間が短縮
- 属人化の防止、業務の標準化
この病院はその後、連携するシステムや法律の改正(診療報酬改定など)にも対応して、RPAの継続的な業務効率化が定着しています。今後は外来患者だけでなく入院患者のレセプト業務の改善なども検討していくなど、他業務の自動化も進めていく予定です。
業務効率化に必要なのは「冷静な目」
RPAで業務効率化するカギは3つ
- 導入目的を明確にする
- 業務の棚卸しをする
- 外部パートナーの協力を仰ぐ
事例からも、RPA導入そのものの効果と、導入するまでの業務改善の効果がお分かりになったかと思います。
とくに事例で紹介した「業務の進め方が属人化していた」というケースは、なかなか所属する組織の人間からは見えづらいものです。「この業務はそういうもの」という思い込みもありますし、「昔からやってきたことを変ようと提案するのは勇気がいる」ということもあるでしょう。
そうした場合には、外部パートナーの冷静な目が有効です。
外部の人間から業務の進め方に違和感を指摘されて、初めて「そう言われれば…」と感じることも少なくありません。
少子高齢化、そして変化の激しいVUCA※の時代において、全てを自社だけで賄うには限界があります。ぜひ、現場ヒアリング力に長けたパートナーを見つけてください。きっと自社の成長を促す起爆剤になってくれるでしょう。
※変動性が高く、不確実で複雑、さらに曖昧さを含んだ社会情勢のこと。
ロボフィスは全国に事業所を構え、地域の特性やクライアント企業の文化を踏まえたRPA導入・DX推進を支援しています。リモートによるお打ち合わせはもちろん、現地でのヒアリングも無料で行っているため、RPA導入・DX推進をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
【RPAツール徹底比較】自社に最適なRPAツールとは?
代表的なRPAツールである「WinActor」「UiPath」「Power Automate Desktop」、3つの特徴をまとめて比較しました。
特典として、それぞれのツールで同じ作業を自動化した比較動画のURLも掲載しています。
RPA導入にお悩みの方、ツール選定の決め手に欠ける方はぜひご活用ください。