前回までのあらすじ
DXに欠かせないマインドセットを学んだ初心さん。元気いっぱいにDX推進にまい進していたはずですが、なんだか不安そうな表情を浮かべています…。
DXの失敗事例を知りたい…
なんだかこのままDXを進めていて大丈夫なのか、心配になってきて…
たしかに、DXの失敗事例を知ることで、事前に似た失敗を回避できますね
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DXの失敗事例
それではさっそく、具体的なDX失敗事例をご紹介しましょう
DXの失敗事例① コダック(米国)
コダックは、1888年にジョージ・イーストマンによって設立された米国のカメラ・写真用品メーカーです。19世紀末から20世紀にかけて世界的に写真フィルム市場を独占しました。
しかし、2000年代に入るとデジタルカメラの普及により、コダックの経営は悪化の一途をたどりました。
コダックの経営破綻の原因は、大きく3つあると言われています。
●市場の変化による需要の減少
写真フィルム市場の縮小を放置し、市場の変化に取り残された。
●経営判断による事業転換の遅れ
デジタルカメラ事業への転換に遅れ、競合他社に市場を取って変わられてしまった。
●過去の成功体験(自社ノウハウ)に固執
デジタルカメラ市場に参入した際※、同社は既存技術である「デジタルデータの印刷」の開発に投資。写真フィルム事業で培ったノウハウを捨てきれなかったことが経営破綻の一因に。
※一方で、世界初のデジタルカメラを開発・販売したのも同社。
このような原因が重なり、2012年、コダックは連邦破産法第11条の適用を申請し、経営破綻しました。
ノウハウは大事だけど、それに固執していると時代に取り残されるんだ…
企業は市場のニーズにいち早く対応しなければ、競合に大きく引き離されてしまう危険性があります
DXの失敗事例② ワシントン・ポスト(米国)
2012年のワシントン・ポストの発行部数はピーク時の6割、48万部まで減少し、収入は過去6年で40%まで落ち込んでいました。2013年時点で、損失は5400万ドルにまで拡大するなど業績は悪化する一方でした。
もっとも、それは同紙のみならず、新聞や雑誌といった紙媒体のメディア市場全体が落ち込んでいました。スマートフォンが普及してSNSなどで個人間の情報伝達の速度が増し、タイムラグが発生する紙媒体のメディアの価値が下がったことが要因です。
また、業界各人も、このままではいけない、という危機意識を持ちながらも、次の一手が打てずに、ただネットニュースを無料で公開するなど、収益性の上がらないサービスの展開に終始していました。
たしかに、ネットニュースがあるから新聞っていらないかも?
当時のオーナーであるグラハム氏は、インターネット全盛の21世紀において新聞の価値を再定義する必要に迫られました。悩んだ末、Amazon創始者のジェフ・ベゾス氏に買収を持ち掛けることにしたのです。
それ受けて2014年にベゾス氏は2億5,000万ドルで同紙を買収。ベゾス氏が取り組んだのが新聞ビジネスのDXでした。
まず氏は「優れた地方紙を有力な全国紙へ、そして世界で名の知れた存在へ」というビジョンを掲げました。
そのビジョンに基づいて、インターネット事業に注力。その理由は「インターネットを使えば世界中に情報が届けられるから」。ビジョンとマッチした方向転換と言えます。それは同時に、紙からウェブへ、ビジネスモデルを変化させるということでもありました。
これまで無料で配信していたニュースは、改めてデジタル版として有料にすることに。同時に、有料の価値を感じてもらうべく、編集者の質向上にも取り組みました。また、各配信先のプラットフォームやWEB、アプリ、紙面に対して責任者を配置。各責任者が自らの判断で最適化を行う体制へと変更していったのです。
同時にエンジニアリングチームの規模を3倍に拡大。ページの読み込み速度を上げるなど、デジタル版のユーザー体験も高めました。
こうした取り組みが功を奏し、2017年には購読者数は75%増加し、デジタル版の契約件数も倍増。オンラインのウェブ訪問者は初めて「ニューヨーク・タイムズ」紙を上回りました。
このほか、コンテンツの掲載・運用からマネタイズまで一元管理できるメディアプラットフォーム「アーク・パブリッシング」を開発し、他紙にも販売するようになりました。これは社内で使用していたツールだったものを、外部にも販売することになったもので、十数社の顧客を獲得しています。
アナログ媒体の新聞がこんなに鮮やかにDXできるんですね!
DXの失敗事例③ 三越伊勢丹ホールディングス(日本)
現在は食品定期宅配サービス「ISETAN DOOR(イセタンドア)」や化粧品ECサイト「meeco(ミーコ)」といったデジタル領域の小売りでも躍進している三越伊勢丹ホールディングス(以下、三越伊勢丹HD)。日本の中でも早い段階からDXの重要性に注目していた企業の1つです。
百貨店業から飛び出してデジタルの力を活用したEC市場で新たな企業価値を生み出している同社は、DXに成功している企業の一つと言えるでしょう。しかし、成功までには多くの失敗がありました。
中でも代表的な失敗の1つが、米国発のソーシャルコマースサービス「FANCY(ファンシー)」に出店したこと。FANCYは自分の趣味趣向に似たユーザーをフォローして、自分が好む商品をすぐ見つけられるSNSです。また、商品を個別サイトに案内するのではなく、Fancy上で購入できることが大きな特徴となっています。
2013年当時、このFANCYでセレブたちが紹介した商品の売り上げが大きく伸びる現象が見られました。「日本の製品を出したら世界中の人たちに売れるのでは?」と具体的な目標を立てずに出店したところ、失敗に終わりました。失敗の要因は、海外との接点をつくるなど漠然としたビジョンしか持っていなかったことでした。
そのようなチャレンジと失敗を繰り返す中で、改めてDXの方向性を明確化。改めて方向性を定めたのが2021年のことです。
三越伊勢丹のDX戦略の根底 考え方
- 業態、自社の特性をしっかりと明文化する
- 自社の特性(強み)をベースにし、絞り込んだ戦略、戦術により、限られたリソースの最大活用を図る
- 顧客への提供価値を再定義する
- 価値提供を成り立たせる為、抜本的に仕事のやり方、業務フローを変更する
- 超短サイクルで仮説を検証し、変化し続ける
- 得意領域である「店舗/人/商品」に
- “圧倒的に“レバレッジを効かせられるデジタルサービス/機能を具備し
- リアルでもオンラインでも「お客様の期待」に応えられる状態にする
「三越伊勢丹2年越しのおもてなしDX|来店増で問われるデジタルの真価」より
一方、どれだけECを進めていても、百貨店業の中心は店舗です。リアル店舗とデジタルで切り分けてDXを進めたところ、4つの課題に直面。これを解決するために以下のような施策を行いました。
(引用)
●企業の理念/経営ビジョンに紐づき、徹底的に絞り込んだ戦略を構築し、戦術に落とし込む
=やることを極力少なくしリソースを集中する
=やらないことを明確にする
● 顧客体験と従業員体験を具体的に併記し、業務フローを徹底的に現実のものに落とす
●調査、検討に時間をかけるのではなく、素早く実行し 検証するための仕事のやり方と組織体制を確立する
=超高速PDCAを実現する
●成功、 失敗を判断する基準を明確にし、チェックポイントを短期間で設けて、中止/継続/ピボットの判断をシビアに行う
●失敗を徹底的に研究し、次に活かすべき学習ポイントを明文化する
●失敗した事業、サービスを担当していたメンバーの経験、スキルを明文化し、別の事業、サービスにアサインし、それを強みとして活躍してもらう
参考:「三越伊勢丹2年越しのおもてなしDX|来店増で問われるデジタルの真価」より
このような取り組みの成果は同社の業績にしっかりと表れており、2022年3月期のEC売上は372億円で18.1%増、3年後は600億円を目指すとのことです。
失敗してもそこから学ぶのが大切なんだ!
DXの失敗事例から学べること
DXは「失敗してはいけない」と考えるより「失敗は経験」と捉える方がいいですよ
紹介したDXの失敗事例からは、以下のようなことが学べます。
- 市場(顧客ニーズ)の変化に敏感になる
- 過去の成功体験に固執しない
- 変化する方向(目標・ビジョン)を明確にする
- チャレンジを恐れない
- 素早く失敗し、失敗から学ぶ
- 何度も挑戦する
もちろん、このほかにも経営層と現場の共通認識、明確な目標、適切なデジタル技術の活用、人材の育成、組織体制の整備など、さまざまな要素が必要です。
しかし、DXはどうすれば必ず成功できる、という攻略方法はありません。自社・他社の失敗事例を糧に、改善を重ねるしかありません。DXの失敗事例から学び、DXの成功につなげていきましょう。
「これでいいのかな?」と不安になるより「失敗してもいいからやってみよう!」の精神が大事なんですね!
つづく
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