業務を進めるにあたって不可欠な社内システム。開発には莫大なコストと時間を必要としますが、VUCA※と言われる時代において社内システムの構築に時間がかかると、実際の商流とマッチしないものになりかねません。
※変動性が高く、不確実で複雑、さらに曖昧さを含んだ社会情勢のこと。
「なら、これまでの社内システムを使い続ければいい」と考える方もいるかもしれませんが、そういうわけにもいきません。システムに使用されているハードは生産が終了していきますし、古いシステムは近年のエンジニアが習得していないプログラム言語で作られているケースもあります。修理や改修ができない、といったリスクを軽減するためにも、システムの刷新は避けられません。
そうした企業の課題を解決する注目されているのがノーコードツールです。
本稿ではノーコードツールの解説と、主に業務効率化につながるノーコードによるアプリ開発について説明します。
「ノーコードツールについて知りたい」「手早くアプリ開発して業務を効率化したい」という方は、ぜひ最後までご覧ください。
【業務アプリ開発ツール徹底比較】PowerApps/kintoneどちらが使いやすい?
業務効率化に欠かせない業務アプリ開発ツールのなかでもとくに注目されている「PowerApps」と「kintone」の特徴をまとめて比較しました。
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ノーコードツールとは
ノーコードツールとは、プログラムを書くことなくシステムを開発することができるツールです。
通常、システム開発をする際にはプログラミング言語を使用してソースコードを記述する必要があります。ノーコードツールでは、多くの場合はすでにプログラムが済んでいるパーツやテンプレートを組み合わせて、自分に必要なシステムを構築していくことになります。
「ローコードツール」もあり、こちらはわずかなプログラム記述でシステムを開発できるツールという意味です。
多くのノーコードツールでは、カスタマイズや複雑な操作にはプログラム言語の記述が必要なケースが多いため、「ローコード・ノーコードツール」と併記されていることもあります。
ノーコードツールでできること
ノーコードツールはすでにさまざまな領域でサービスが提供されています。
Webサイト開発
ECサイト開発
ビジネスアプリ開発
業務自動化
多くのノーコードツールは、上記の領域に特化したサービス内容になっています。そのため、自社に必要なツールはなにか、明確にした上で導入を検討する必要があります。
ノーコードツールのメリット・デメリット
ノーコードツールの導入にはメリットとデメリットがあります。
ノーコードツールを導入するメリット
プログラミング知識がなくても開発できる
ノーコードであるため、プログラミング知識のない人材でも必要な機能を開発することができます。
開発スピードが速い
一般社員が取り扱えることから、外注の必要がなく、業務内容をよく理解した社員が現場に最適な機能を開発できます。
コスト削減になる
専門人材を育成・中途採用する必要がないため、コスト削減になります。また、自社開発することで外注するコストも最低限に抑えることが可能です。
ノーコードツールを導入するデメリット
ノーコードツールには、メリットだけでなくデメリットもあります。
カスタマイズには知識が必要
多くの場合、ノーコードで開発するためにパーツやテンプレートが用意されています。一方で、用意されたパーツやテンプレートから外れた内容にするにはコーディングの知識が必要になります。また、カスタマイズする場合はシステムをゼロから構築するより時間がかかるケースもあります。
海外製のツールが多い
ノーコードツールは多種多様なものがリリースされており、なかには無料で扱えるものもあります。しかし、多くが海外製で、日本語対応していない、あるいは翻訳が分かりづらいといったケースがあります。
ノーコードツールを選ぶ際には、メリットとデメリットを把握した上で検討してください。
ノーコードツールを選ぶポイント
ノーコードツールを選ぶ際には、以下のポイントを押さえることで、失敗のないツール選びが可能になります。
目的に合ったツールを選ぶ
先述したように、ノーコードツールはさまざまな領域に広がっています。たとえば、パソコンとモバイルの両方で使用できるアプリを開発したいのに、モバイルアプリのツールを選んでは導入目的に沿いません。逆に、パソコン用アプリが不要な場合はモバイルのみに対応しているツールの方が良いでしょう。
使用者のレベルに合っているか
ノーコードツールを導入する際、一般社員による開発・運用が目的であるケースが多いでしょう。その場合、ツールを使用する社員のIT知識レベルにマッチしているかが重要になります。ノーコードであればプログラミング知識は不要ですが、カスタマイズすることが想定されるのであれば、自ら学習する姿勢も必要です。また、なかにはサポート言語が英語のツールもあるので、英語の読解ができない社員の場合は、そうしたツールの導入は避けたほうが無難でしょう。
サポート体制
ノーコードツールであっても、不具合が発生すれば対処する必要があります。その際にサポートが充実しているツール、もしくは提供会社を選ぶことがシステムの安定運用には欠かせません。
また、サポートがあっても海外製の場合は英語になることもあるので、この点も導入前にチェックしておくと良いでしょう。
業務効率化に役立つノーコードアプリ開発ツール
ノーコードツールはどの領域にあっても、開発スピードのアップ、コスト削減に大いに貢献してくれます。
その中でも、とくに業務効率化に役立つ業務アプリ開発の領域で代表的なノーコードツールをご紹介します。
PowerApps
PowerAppsは、Microsoftが提供するノーコード・ローコードのアプリ開発ツールです。PowerAppsは、MicrosoftのOffice 365に統合されているため、Office 365のユーザには使いやすいツールと言えるでしょう。例えば、ExcelやSharePointのデータを利用して、簡単にアプリケーションを作成することができます。
テンプレートも多く用意されていて、簡単な日報アプリなら約5分で作成できます。
PowerAppsの特徴は以下です。
①カスタマイズ性の高さ
ドラッグ&ドロップで作成可能なインターフェイスを提供しており、コーディングの知識がなくてもアプリケーションをカスタマイズすることができます。
②マルチプラットフォーム対応
PowerAppsは、Windows、iOS、Android、Webなど、多数のプラットフォームに対応しています。
③ワークフロー機能
PowerAppsはPower Automate※と連携していて、承認プロセスやタスク管理などを自動化することができます。
※Microsoft社が提供する業務自動化ツール。クラウド上でノーコードでフローを作成可能。
④簡単なデータ分析
PowerAppsは、ExcelやPower BIと連携することで 、ビジネスデータを簡単に分析することができます。
料金プラン PowerApps | 料金(月額) |
---|---|
アプリごとのプラン | 540円 |
ユーザごとのプラン | 2,170円 |
従量課金プラン | 1,120円 |
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WordやExcel、PowerPointといったビジネスに欠かせないアプリ。それ以外にもMicrosoft 365にはさまざまなアプリがあり、それらを連携させることで業務効率を大幅にアップできます。
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kintone
kintoneは、日本企業サイボウズによるクラウドベースのノーコード・ローコードによるアプリ開発ツールです。コーディング知識不要で業務アプリケーションをドラッグアンドドロップやマウス操作だけで簡単に構築できるのが魅力です。
kintoneの特徴は以下です。
①直観的な操作ができる
ドラッグアンドドロップやマウス操作で簡単にフォーム、ビュー、フィールドなどをカスタマイズすることができます。「サンプルアプリ」という名前でテンプレートも充実しています。
②ワークフロー機能
承認プロセスやタスク管理など、さまざまなビジネスプロセスに対応することができます。
③セキュリティの強化
アクセス制御やログ管理など、機密情報を保護するためのセキュリティ機能を備えています。
④データを分析して見える化
データベースと連携してビジュアルレポートやチャートなど、ビジネスの傾向や成果を見える化することができます。
⑤APIの豊富さ
多様なAPIを提供しており、外部サービスとの連携が容易です。また、kintoneで作成したアプリケーションを外部サービスにエクスポートすることもできます。
⑥プラットフォームの拡張性
サードパーティのアドオンを利用することができ、より多様な機能を使用することができます。
kintone 料金プラン | 料金(月額) |
---|---|
トライアルプラン | 無料 |
スタンダードコース | 1ユーザ 1500円 |
ライトコース | 1ユーザ 780円 |
AppSheet
Googleが提供するノーコードツールです。コーディングの経験がなくても、誰でもモバイルアプリやWebアプリを構築できます。Google Workspaceのサービス内で展開されているため、他のGoogleアプリとの連携が容易です。
AppSheetの特徴は以下の通りです。
①カンタンな開発
使い方は、データベースと接続するだけ。10種類のデザイン(View)から選ぶと、データの項目が自動的に配置されます。項目内容が誤っていることもあるので、それについては修正作業が必要です。
②Google Workspaceの各種アプリと連携可能
Googleが提供するサービスは、他社ノーコードツールでの連携が標準実装されていないケースが多いです。しかしAppSheetはGoogle Workspaceのサービスであるため、Googleのアプリと連携が容易です。
③データを効率的に管理
Googleスプレッドシートのほか、Salesforce、box、awsといった他社のデータソースとつなげることもできます。また、地図情報や位置情報、QRコードの読み取りといったデータを取り扱うこともできます。
④ワークフローの自動化も可能
Google Workspaceのアプリを連携させて、業務の自動化も可能です。たとえば、AppSheetで作成したアプリで入力した日付を、Googleカレンダーに自動的に記録する、といったことも可能です。
ただし、AppSheetは2023年8月時点で英語版のみとなっています。検索機能もありますが、英語での入力になります。
AppSheet 料金プラン | 料金(月額) |
---|---|
Starter | 5$/1ユーザ |
Core | 10$/1ユーザ |
ノーコードアプリ開発ツールによる業務効率化事例
業務アプリをノーコードで開発して、効率化した事例をご紹介します。
kintoneを使って顧客情報管理を一元化
コールセンターでの導入事例です。
コールセンターでは膨大な顧客情報を検索で見つけ出すのに時間がかかると、お客様をお待たせすることになります。また、お客さまからの依頼を現場担当者と連携するのに電話などを使用していると、つながらないケースも。データが随時連携できていないことで、顧客対応を誤ってしまう可能性もあります。
これらの課題を解決するため、kintoneを導入。
顧客情報の表示がカンタンになり、顧客情報の取り違えといったミスが減少。受注後の現場担当者への指示はメールになり、連絡の手間が大幅に削減できるようになりました。さらに、現場担当者のスケジュールもアプリで一括管理することで、現場と連携が取れるようなフローに改善されました。
PowerAppsを使って社内申請をわかりやすく
総務課でのPowerApps活用事例です。
それまで総務課では、社員各人が社内申請をメール・電話で総務担当者に連絡していました。そのため、課内での共有が難しく、作業が重複することも。また、上長への申請フローも定まらず、何度も申請内容を確認してしまうケースもありました。
こうした非効率な状況を改善するべく、PowerAppsで申請アプリを作成。窓口を一元化することで、担当者の他、総務課全体で申請内容を共有できるようになり、さらに入力項目も必須にすることで入力漏れを防いで不備書類も激減するようになりました。
加えて、Power Automateと連携させて、上長への承認フローも自動化。証跡も残るようになり、社内申請フローが大幅に改善されました。
参考:社内事例
まとめ
ノーコードツールを導入すれば、プログラミング知識のない一般社員であってもシステムを開発でき、さらに開発スピードのアップ、コスト削減、現場フローに応じたシステムの構築が可能になります。
ノーコードツールのなかには無料で使用できるものや、Google Workspace、Microsoft 365といったすでに加入しているサービスの延長で使用できるものもあり、導入のハードルも低いと言えます。
ただ、全てを自社で行うのは、担当者の負担が大きくなり過ぎます。また、エラーが起こった際に対処可能な専門家と協力体制を築いておくことは、リスクヘッジになります。
ロボフィスでは、PowerAppsやkintoneはもとより、Power AutomateやPowerBI、WinActorなどのRPAなどさまざまな業務自動化ツールを、お客様の課題にあわせて改善案をご提案・ツール導入支援を行っています。
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