■前回までのあらすじ
業務自動化とともにDXを進める初心さん。プロジェクトを進める中で、気になっていることがあるようです。
いろいろな業務を随分自動化したけれど、時々「これって意味ある?」みたいな仕事を見つけますね。
そんな時は「BPR」を検討してみてもいいかもしれませんね
BPRってなんですか?
BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)とは
BPRは「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング<Business Process Reengineering>」の略で、簡単に言うと「会社の仕事のやり方を根本から見直して、ガラッと変える」ことです。
- 書類の確認や承認に時間がかかりすぎている
- 部署間の連携がうまくいっていない
- 顧客の要望に素早く対応できない
こういった課題に対して、手元の仕事を見直すだけでなく、仕事の進め方を抜本的に見直すことで仕事全体を効率化することがBPRです。
BPRと業務改善の違い
それって業務改善となにが違うんですか?
BPRは一般的な業務改善とは少し違います。
業務改善は、例えば「書類の承認に時間がかかりすぎている」という課題に対して、「紙書類をデジタル化する」「デジタル承認を可能にする」といった改善に当たります。これでも目の前の業務効率は高まりますが、BPRは「そもそもその書類に対する承認は本当に必要なのか?」という視点で業務プロセスを見ていきます。
もしその書類の承認が「低額の経費決裁」について「チームリーダーから課長までの承認が必要」だったとしたら「3万円以下の支払いはチームリーダーの決済のみで承認する」という業務プロセスに変えてしまえば、課長の承認そのものが省けて、業務量の削減、承認時間の短縮といった効果を生み出すことができます。
確かに、やれるならやりたい! でもそれって結構時間かかりません?
おっしゃる通り。BPRは会社全体での取り組みになるので、長期的な視野と経営層の協力、大きなコストがかかることも想定しておかなくてはいけません。
項目 | BPR | 普通の業務改善 |
---|---|---|
改革の度合い | 抜本的な改革 | 少しずつ改善 |
取り組み方 | 会社全体で一気に | 部分的に少しずつ |
目的 | 劇的な業績向上 | 効率化、コスト削減 |
リスク | 大きい | 比較的小さい |
BPRのメリットとデメリット
BPRにはリスクもありますが、成功した時のインパクトは大きく、劇的な業績向上が期待できます
どんなメリットとデメリットがあるのが、詳しく教えてください!
BPRのメリット
BPRのメリットは以下の4つです。
- 業務効率のアップ
- コストの削減
- 顧客サービスの向上
- 競争力のアップ
業務効率のアップ
BPRでは、会社の仕事のやり方を根本から見直します。そのため、今まで気づかなかったムダな作業をなくしたり、効率の悪い進め方を改善したりできます。これにより、仕事のスピードが上がり、より多くの成果を出せるようになります。
コストの削減
業務効率が改善されると、残業が減ったり、システムの管理費用が下がったりして、会社の支出を減らすことができます。BPRのスタート時はコストに目が行きがちになりますが、長期的視野に立って見ると会社の利益を増やすことが期待できます。
顧客満足度アップ
仕事の進め方が良くなると、お客様への対応が早くなったり、より質の高いサービスを提供できたりします。これにより、顧客満足度が向上し、結果的に会社の利益に繋がっていきます。
従業員満足度アップ
ムダな業務やルールが改善されると、社員の心理的負荷が低減し、より働きやすくなります。また、多くの場合で仕事の全体像が見えやすくなるため、自分の仕事の意味がわかり、やりがいを感じやすくなります。
BPRのデメリット
BPRには素晴らしいメリットがある一方で、注意すべきデメリットもあります。
- 時間とコストがかかる
- 社員の負担が大きい
- 社内の反発や摩擦が考えられる
時間とコストがかかる
BPRは会社全体の仕事のやり方を変えるので、とても時間がかかります。また、場合によっては新しいシステムを導入したり、社員を教育したりすることになり、時間的・金銭的コストが必要になります。
社員の負担が大きい
多くの場合、BPRを通じて今までの業務プロセスを大きく変えることになるので、社員にとって負担が大きくなります。新しい業務プロセスに慣れるのに時間がかかり、新たな環境にストレスを感じたりする人もいるかもしれません。そういった方々のケアをすることも十分考慮する必要があります。
社内の反発や摩擦が考えられる
社員の中には変化を好まない人や、現在の業務プロセスで十分だと考えている人もいます。そういった社員からBPRに対して反対の声が上がるケースも少なくありません。こうした抵抗が強いことで、経営層や担当者がBPRを断念してしまうことも珍しくありません。
結構気合が必要ですね…。
負担は大きいですが、そうしなければ今以上の発展はない、という状況の業界もあります。長期的な視点で会社経営を考えた時にどうすることが重要か、経営者の覚悟が問われる施策と言えます。
BPRの進め方
コレ、決定するのは経営者でも、実行するのは現場ですよね。やるとなったらどう進めるんですか?
では、一般的なBPRの進め方を説明しますね。
BPRは以下の手順で進めていきます。
- 検討
- 分析
- 設計
- 実施
- 評価
検討
業務の洗い出し
まず行うのは、現場で行っているすべての業務を一覧表に整理して、どの業務に時間を費やしているのか、どの業務でミスが発生しているのか、といった議論をできるようにすることです。洗い出した一覧表のことを「業務の棚卸し表」と呼びます。
業務内容を把握する
棚卸しした業務の内容について把握します。これには現場の業務ヒアリングが欠かせません。現状を正しく把握し、その中でムダに気づくことで、改善策を考えることができます。
業務選定
業務内容を把握した後、まずどの業務課題から着手していくのかを選定します。選定するポイントは、会社の業績に対して大きなインパクトを与える業務から着手していくと効果を体感しやすくなります。
分析
業務を「見える化」する
業務プロセスを、誰でも理解できるように「見える化」していきます。フローチャート図として表すことが多く、図示することでテキストマニュアルよりも直感的にわかりやすくなります。
設計
方針の策定・実施方法の検討
洗い出した現状や課題から、どの業務課題を、どんな方法で、どのように改善していくのか方針を固めていきます。
また、システムや業務内容、業務の流れなどがバラバラになっているビジネスプロセスの標準化やアウトソース、ITツールで自動化できる業務がないかなども検討します。
ビジネスプロセスの設計
方針を踏まえた業務プロセスを再設計します。この時、さまざまなフレームワークを使って考えていきます。よく使用されているのがECRS※1、As-Is / To-Be※2といったフレームワークです。
ポイント
※1:ECRS
業務の課題を洗い出し、解決策を打ち出すための業務改善に用いられるフレームワーク。Eliminate「除去する」Combine「まとめる」Rearrange「整理する」Simplify「簡単にする」の頭文字をとったもの。
※2:As-Is / To-Be
現状分析と未来の理想状態を比較するためのフレームワーク。
As-Is: 現在の業務プロセスや状況を詳細に分析し、問題点や課題を洗い出します。
To-Be: 理想とする未来の業務プロセスや状態を定義し、目標とします。この理想状態に到達するための具体的な改善策やアクションプランを考えます。
このフレームワークを使用することで、現状と目標のギャップを明確にし、改善のための具体的なステップを計画・実行することができます。
このようなフレームワークを使って業務プロセスを分析し、再設計していきます。
ここまでの部分は、自社だけで行うのは難しい場合も多いので、外部の会社に協力してもらうことも検討してみてください。
自分の会社の悪いところって、なかなか気が付かないことが多いですもんね
協力会社選びのポイントは、メーカーではない会社を選ぶことです。いろいろな解決方法を提示してくれて、ツール導入にこだわらない協力会社を選ぶと、本質的な課題解決につながりますよ
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実施
再設計した業務プロセスを実行していきます。BPRは長期的な計画となるため、最終的な目標のほかに短期目標も立てると細かくPDCAを回していくことができます。
評価
計画から実施までの工程を振り返り、評価します。この工程は重要で、「どの程度改善できたか」「できていなければ何が原因か」をしっかりと把握して改善を繰り返すことが長期的な目標達成につながります。
定量・定性いずれも判断材料になりますので、実施前の状況も記録しておくなど、あらかじめ評価できるようにしておきましょう。
やりっぱなしは意味がないってコトですね。
実施前にアンケートをとるなどしておくと、評価する際の指標の一つになりますよ。
まとめ
BPRの目的は、現状の業務プロセスを見直し、理想の状態を目指して具体的な改善策を実行することです。
進め方は簡単にまとめると以下のようになります。
- 現状を分析
- 理想の状態を定義
- アクションプランを策定
- 再設計したプロセスを実施
- 評価を行って改善を繰り返す
このように言葉にするとBPRは難しそうに聞こえますが、要は「今のやり方にとらわれず、ゼロから最適な仕事の仕方を考える」ということです。
いまはRPAとか便利なツールもあるし、それも含めた新しい仕事の進め方を考えたいですね!
BPRは社員研修からはじめることも有効です。
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