総務省統計局によると、労働力人口(15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口)は2021年平均で6667万人。前年と比べると9万人が減少しています。2年連続で減少していて、今後も労働人口は低下し続けていく予測です(総務省「労働力調査(基本集計)2021年平均結果」より)。
このような少子高齢社会で働き手を確保することは、企業が存続する上で大きな課題と言えるでしょう。働き手が望む組織の在り方や、それに対応していくための考え方を、事例を交えてご紹介します。
働き手に選ばれる組織とは
2021年に大学を卒業予定の就活生4,199名に対して「就活生の「働き方」に関する意識調査アンケート」が実施されています。その調査によると、「どのような企業に魅力を感じますか?」という問いに対して、75%が「社内の雰囲気が良い」ことを挙げています(調査内容:就活生の「働き方」に関する意識調査アンケート 実施機関:株式会社i-plug 実施期間:2020年2月13日〜2020年2月19日 URL:https://offerbox.jp/company/jinji-zine/hatarakikata/)。
回答に対して、以下のような意見が挙げられています。
「困ったときに助け合いができて、働きやすいから」
「ギスギスした雰囲気の中では効率のいい仕事ができないと感じるため」
「どんな仕事をするにも、対人関係でストレスがあったら続かないと思うから」
「就活生の「働き方」に関する意識調査アンケート」より一部抜粋
上記の理由からは、職場での良好なコミュニケーションを求める就活生の姿勢がうかがえるでしょう。
では入社後、転職を希望する人の離職理由を見てみましょう。
厚生労働省の「令和2年転職者の実態調査」によると、自己都合による離職理由で最も多かったのが「労働条件(賃金以外)が良くなかったから」で28%でした。次いで「満足のいく仕事内容でなかったから」が26%となっています。
この2つのデータから、「社内の雰囲気の良さ」を重視して入社し、「労働条件(賃金以外)・仕事内容の相違」から離職するという流れが見て取れます。
つまり、優秀な人材に選ばれ、社内に留め続けるためには、
- 職場のコミュニケーションが良好であること
- 働く場所が安全・快適であること
- 自分のスキルが発揮できる仕事であること
が必要だと言えます。
魅力的な職場づくりで求人者の心をつかむ
2022年4月、日立製作所が2022年度中にもフレックスタイム制で、一日の最低労働時間を廃止すると発表しました。同時に週休3日も可能な就労規則を変更するとのこと。柔軟な働き方が可能な制度作りで人材確保につなげる狙いです。
日本マイクロソフトは2019年から就勤4日、週休3日を実施。より質の高い仕事につなげるため、個人の働き方の選択肢を増やし、多様な経験を有した人材が協力し合うことで組織を成長させることを目的としています。
人材確保の狙い以上に、職場環境の整備や業務内容の棚卸しを行い、生産性を高める経営戦略として取り組んでいるのが特徴です。働く人のスキルを最大限発揮できるように、制度を柔軟にしていると言えます。
こうしたいわゆる「働き方改革」は大手企業しかできない、と思われる方も少なくないでしょう。実際、どういった制度が効果的かは企業ごとに異なり、決まった解決策はありません。しかし、「働く人のスキルを最大限発揮できるよう、柔軟な制度を作る」という考え方は、組織規模の大小にかかわらずに取り入れることが可能です。
例えば、コロナ禍で一気に広まったリモートワーク。緊急時の臨時的な働き方に止めるのではなく、一つの働き方として定着させることも有効な一手でしょう。
転職サービス「doda」が同社会員に対してアンケート調査を行ったところ、転職を検討する際に、リモートワーク・テレワークを実施しているかどうかが「応募の意向に影響する」と回答した人は約6割(55.7%)に上りました。
転職後は「毎日」リモートワーク・テレワークで働きたいという回答も約3割(34.2%)で最多となっており、転職希望者のリモートワーク・テレワークへの希望は高まっています。(「第3回リモートワーク・テレワーク企業への転職に関する調査」より)
リモートワークが難しい職種であっても、雑務をITツールで自動化したり、データベースを作成して書類作成の手間を簡略化したりするなど、「働く人のスキルを最大限発揮できるよう、柔軟な制度を作る」ことは可能です。
例えば、エッセンシャルワーカーとしてコロナ禍で注目された小売業の販売員。リモートワークが難しい職種ですが、イトーヨーカ堂では2020年9月よりAIを使った商品発注システムを導入し、発注作業にかかる時間を平均約3割短縮しています。過剰発注を防ぎ適正在庫の確保につながり、短縮された時間は接客の充実につなげて個人のサービススキル向上を図っています。
魅力的な職場を作らないことのリスク
「働き方改革」やITツールの導入、いわゆるDXを進めることが難しいと感じている企業もあるでしょう。確かに、一度出来上がった会社組織を変えていくことは大変な労力が必要です。しかし、旧来の組織のままでは、この先大きなリスクを抱えることになります。
これまで述べてきた通り、働き手は今後ますます少なくなっていきます。その中で自社の魅力をアピールするよりも先に労働環境で人材を取り逃してしまうことは、人事面でのリスクと言えるでしょう。
また、旧来通りの会社組織のまま、という選択をしても他社が「働き方改革」などを進めた場合、相対的に企業価値が低下していきます。「何もしない」という選択は、ビジネスシーンにおいて立ち止まるどころか後退し、競合に大きく引き離されるというリスクをも孕んでいるのです。
「働く人のスキルを最大限発揮できるよう、柔軟な制度を作る」という考え方は、これからの組織経営において不可欠な視点になっていきます。
「どう取り組めばいいのかわからない」「一度取り組んだがつまずいた」という方は、自社だけで取り組むのではなく、セミナーに参加するなど外部への相談も有効です。
広く知識を集めて実行する──それこそが柔軟な働き方への一歩となります。
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