2024年4月より「医師の働き方改革」が適用されます。実施日が間近に迫りつつある中、業務改革を急ぐ医療現場も少なくないでしょう。
本稿では、「医師の働き方改革」の必要性とタスク・シフト/シェアを実現するDX促進の重要性についてまとめます。
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少子高齢化が進み、医療業界において人材不足は顕著です。さらにコロナ禍で医療現場はひっ迫し、病院経営において業務効率化は最重要課題となっています。
本セミナーでは、業務改革、DXにおいて注目されているRPAを用いたレセプト請求作業の自動化について、実際の導入事例を交えながらご紹介します。
タスク・シフト/シェアが求められる背景「医師の働き方改革」とは?
「働き方改革」そのものは2019年より施行され、順次実施されているのはご存じの通りです。1カ月の時間外労働時間数は 45 時間を超えないことが原則となっています。そのほか、年に6カ月を限度に月 100 時間未満の時間外・休日労働が認められ、その場合の年間の時間外労働は 720 時間までとされています。
しかし建設・自動車運転・医師のみ、導入の猶予期間として5年が与えられていました。その期日が2024年4月であり、それに向けて2021年5月には医療法改正について公布されています。
改正の趣旨としては、今後、より良い医療を効率的に提供するために
●医師の働き方改革
●各医療関係職種の専門性の活用
●地域の実情に応じた医療提供体制の確保
が必要であり、そのために医師自身の健康管理や地域医療構想をしっかりと支えていかなくてはいけない、というものです。
そのうえで2024年4月からは医師の時間外労働時間について以下のような規定が設けられます。
─ | 対象 | 時間外労働上限 |
---|---|---|
A水準 | すべての医師 ★診療従事勤務医 | 年960時間以下/月100時間未満(休日労働を含む) |
B水準 ※2035年に廃止予定 | 地域医療確保暫定特例水準 ★救急医療など緊急性の高い医療を提供する医療機関 | 年1,860時間以下/月100時間未満(休日労働を含む) |
C水準 | 集中的技能向上水準 ★初期臨床研修医・新専門医制度の専攻医や高度技能獲得を目指すなど、短期間で集中的に奨励経験を積む必要がある医師 | 年1,860時間以下/月100時間未満(休日労働を含む) |
こうした国の動きに応じて、医療機関では医師の労働時間短縮に向けた取り組みと適切な労務管理が、今後一層求められることになります。
長時間労働を解消するタスク・シフト/シェアの考え方
こうした規定に沿った職場環境を整えるためには、業務効率化は避けて通れません。
厚生労働省が医師にアンケート調査を実施したところ、医師の時間外労働の主な理由は「緊急対応」64.8%、「手術や外来対応等の延長」57.7%、「記録・報告書作成や書類の整理」55.6%と続くことが明らかになりました(表参照)。
厚生労働省はこれら業務を、医師以外のメディカルスタッフに任せるという「タスク・シフト/シェア」の考え方で医師の業務効率化を進めることを提案。各メディカルスタッフの業務範囲の見直しを図っています。
メディカルスタッフの業務範囲の追加例
看護師
・予め特定された患者に対し、事前に取り決めたプロトコルに沿って、医師が事前に処方した薬剤の投与、採血・検査の実施
・救急外来において、医師が予め患者の範囲を示して、事前の指示や 事前に取り決めたプロトコルに基づき、血液検査オーダー入力、採血・検査を実施する など
薬剤師
・手術室・病棟等における薬剤の払い出し、手術後残薬回収、薬剤の調製等、薬剤の管理に関する業務
・事前に取り決めたプロトコルに沿って、処方された薬剤を変更する(投与量・投与方法・投与期間・剤形・含有規格等) など
臨床検査技師
・心臓・血管カテーテル検査・治療における直接侵襲を伴わない検査装置の操作(超音波検査や心電図検査、血管内の血圧の観察・測定等)
・病棟・外来における採血業務(血液培養を含む検体採取)
臨床工学技士
・手術室、内視鏡室、心臓・血管カテーテル室等での清潔野における器械出し(器械や診療材料等)
・医師の具体的指示の下、全身麻酔装置の操作や人工心肺装置を操作して行う血液、補液及び薬剤の投与量の設定等
ほかにも
・短時間勤務の医師の活用
・医師事務作業補助者の活用
・特定行為研修を修了した看護師の活用
・助産師の活用
なども厚生労働省から提案されています。
現在、メディカルスタッフの拡大業務に応じた研修などが実施されています。しかし、医師業務を請け負う側の人材育成は簡単ではありません。
また、医療業界全体が人材不足に陥っている点も無視できない影響があります。
すると、医師が抱える業務の中で比較的タスク・シフトしやすい記録・報告書作成業務などの業務から医師事務作業補助者に任せていくと取り組みやすいでしょう。
タスク・シフト/シェアを加速させる病院DX
しかし、その医師事務作業補助者も確保は簡単ではありません。未経験者であれば資格取得が必要ですし、その後も研修などの育成時間が必要となります。
まったくの未経験者を採用・育成するよりも、医事課人員を医師事務作業補助者として育成する方が、現場の混乱もなくスムーズに移行できるでしょう。しかし、医事課人員であっても現行業務で手一杯であることがほとんど……。
そこで注目したいのが、DXの推進です。
DX<Digital Transformation>は以下のように定義されています。
「企業がビジネスの激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会ニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
簡単に言うと、「データ(IT)を活用することで新しい価値を生み出すこと」と言えます。医療においては、「データ(IT)を活用することでより質の高い医療を提供できるようになること」と言えるでしょう。
医療分野におけるデータツールと言えばICT<Information and Communication Technology:情報通信技術>で、オンライン予約システムや電子カルテが代表的です。
導入後、従来の業務よりも効率的になったことを実感された方も多いのではないでしょうか。
しかし中には「結局チェックは人の目に頼っている」「医師との連携は不可欠だから手間は変わらない」といったケースに悩まれている方もいるでしょう。
せっかく業務をデータ化できたのであれば、それを活用するDXの第一歩として、ITを活用した業務自動化にも注目してみてください。
例えばRPA。(RPAについての説明はこちら)
電子カルテで記入した内容を別の書類様式に転記する業務は、RPAに最適です。電子カルテもそれぞれ仕様が異なりますが、RPAであれば調整が可能です。
医事課の業務は特にRPAが得意としており、中でもレセプト請求業務の自動化は大きな業務時間削減効果が期待できます(事例はこちら)。
また、出退勤管理や有給管理といった人事業務、事務業務もRPAの得意とするところです。
こうした医療事務関係の業務をRPAで自動化することで、医事課における作業人員や時間にゆとりが生まれます。この人員・時間を医師事務作業補助者の育成・業務にあてることができれば、さらに医師の負担が軽減されるでしょう。
まとめ
「医師の働き方改革」とは?
・2019年より施行され、建設・自動車運転・医師のみ、導入期日は2024年4月。
・1カ月の時間外労働時間数は原則 45 時間が上限。そのほか、年に6カ月を限度に月 100 時間未満の時間外・休日労働が認められ、その場合の年間の時間外労働は 720 時間まで。
「医師の働き方改革」を実現するには、働き方そのものを見直さなければならない
・厚生労働省は、医師以外のメディカルスタッフに業務を任せる「タスク・シフト/シェア」の考え方で医師の業務効率化を進めることを提案。
・同時に各メディカルスタッフの業務範囲の見直しを図っている。
・医師が抱える業務の中で比較的タスク・シフトしやすい記録・報告書作成業務などの業務から医師事務作業補助者に任せていくと取り組みやすい。
医事課業務の定型作業をデジタル化することで人員を確保
・ICT<Information and Communication Technology:情報通信技術>を活用して、オンライン予約システムや電子カルテで業務記録をデジタル化。
・RPAを活用して定型業務を自動化。
・空いた時間で医師事務作業補助者を育成。
人材不足の中、業務時間の短縮が求められる医療業界において、DXの推進は避けて通れない経営課題と言えます。
ただ、院内にDXやITの専門家がいない、というケースも少なくありません。病院DXについて「よくわからなくて不安」という場合は、導入支援を請け負う会社に相談してみると良いでしょう。
より質の高い医療の提供と発展のためにも、ぜひDXを進めて「医師の働き方改革」を実現してください。
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