近年はVUCA※の時代と言われ、ビジネスにおいてこれまでにないほど流動性が高い状況にあります。不確実な市場においてどのようにビジネスを変化させていくのか、柔軟かつスピーディな対応が必要です。
※変動性が高く、不確実で複雑、さらに曖昧さを含んだ社会情勢のこと。
それを可能とするのが、デジタルツールです。
ツールでデータを集めて分析し、変化が見られれば都度、プロジェクトに修正を加えていく──それを繰り返すことで、VUCAな時代にも柔軟に対応できる体制が整っていきます。
このような「結果に対して素早く反応し、意思決定をして精度を上げる」手法として注目されているのが、「アジャイル開発」の考え方です。
本稿では、仕事で役立つアジャイル開発の考え方について解説していきます。
アジャイルってなに? という方はこちら!
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少しずつ、確認しながら作る「アジャイル開発」
アジャイル<agile>とは、「素早い」「機敏な」「頭の回転が早い」という意味です。もとはソフトウェア開発用語ですが、ビジネス用語としても広く知られるようになりました。
VUCAの時代と言われる今、ソフトウェアやサービス開発において、完成度を上げている間に市場や顧客ニーズが変化してしまい、結果的に作り直しを余儀なくされるケースが少なくありません。そうなると、開発期間や費用など莫大なコストがムダになってしまいます。
そうした開発現場にあって、「変更・修正があることを最初から計画に織り込む」「短い期間でリリースし、フィードバックを受け、改善する」という考え方で、ムダなくニーズの高いソフトウェア開発を行う手法がアジャイル開発です。
要するに、アジャイル開発とは「少しずつ作って確認する」作り方です。
「ニーズに対してズレはないか」「スケジュールに修正が必要か」などを都度検討した上で開発を進めることで、リスクを最小限に抑えることが期待できます。
これまでの開発手法「ウォーターフォール開発」との違い
「ある程度作りこんでから確認した方が手間がないのでは?」と考える方もいるかもしれません。
確かに、これまでの開発方法「ウォーターフォール開発」では、先に詳細な仕様とスケジュールを決めた上で「要件定義→設計→実装→テスト→運用」という順に工程を進めていきます。テストは開発工程の後半で、その時点になると大幅な修正は難しいのが現実です。
アプリ作成など顧客ニーズが変化しやすいプロジェクトに、ウォーターフォール開発の手法では対応しきれません。
一方で、この手法はスケジュールをコントロールしやすいというメリットがあります。「仕様に変更がない」「リリース期日が絶対」というケースは、ウォーターフォール開発が適しているでしょう。
アジャイルな考え方を仕事に活かす
ここまで読まれて「あくまでも開発の話でしょ」「自分の業務には関係ない」と思われた方もいるかもしれません。ところが、そうでもないのです。
近年は少子化の影響で労働人口が減少傾向にあり、バックオフィス業務は効率化が喫緊の課題となっています。そこで、定型業務を自動化するRPAやアプリを内製化できるローコードツールの導入が大手企業を中心に積極的に進められているのです。
上記のようなデジタルツールを導入・活用していく際に、アジャイルな考え方は役に立ちます。
○少しずつ作って確認する
現場で新しいデジタルツールを使い始める時、ウォーターフォール型のように一気に作っていきなり実装しては、現場の使い方とマッチしない場合、修正ができません。
アジャイルな進行で少しずつ導入することで、現場にとっても負担なく新しいツールを活用できる状態にもっていくことができます。
○改良を続ける
アジャイルな進行は、改良を続けることが大前提です。そのため、日々変化する業務内容に対応することをあらかじめ織り込んでプロジェクトを進行することになります。
アジャイルな進行については、以下の注意点も把握しておくことで円滑に業務を進めることができるでしょう。
注意1 スケジュールが流動的
アジャイル開発は短期間で開発し、修正・リリースを繰り返すことでクオリティを高めていきます。
そのため、スケジュールは流動的になりがちで、プロジェクトのコントロールが難しいと言えます。
これは開発でなくても、アジャイルな進行では避けることができません。
注意2 手間がかかる
最低限の要素を実装することからはじめるアジャイルな進行では、どうしても確認・修正の回数が増えがちです。決して「手間が少ない」方法ではないと言えるでしょう。
同時に、低コストが確約されてはいませんし、短工期というわけでもありません。
アジャイル的な考え方は、あくまでも「変化に素早く対応する」ことで「ニーズに合致したものをリリースする」ことを目的としています。
注意3 チームマネジメントが難しい
これまでは、「要件定義→設計→実装→テスト→運用」の段階ごとに担当者がおり、基本的に手戻りがないようにスケジュールが組まれていました。
アジャイルな進行は1つを開発(実装)する度に一連の工程を短時間で行うため、担当者が横並びになって連携していくことが不可欠です。参加メンバーには高いスキルとコミュニケーション能力が求められます。
注意4 共通の目的意識を持ったチームをつくる
プロジェクトの全体管理も難しくなるため、チームの目的意識をしっかりと共有することが必要になります。円滑なアジャイル開発にはメンバーとのコミュニケーションが特に重要と言えるでしょう。
朝礼などの短時間ミーティングや定期的なミーティングを行い、活発な意見交換が行える場づくりが大切です。
アジャイルな考え方の3つのポイント
アジャイルな進行をはじめるにあたって、具体的なポイントが3つあります。
① 開発目標を明確にする(要件定義)
はじめに目標(達成後にあるべき姿)を明確にします。
「アジャイルなんだから、スピード重視でとりあえず作ってから考えよう」という方もいるかもしれません。
しかし、アジャイルで重視しているのは、ゴールまでの最短距離というよりも、変化に対応するスピードです。
そのため、目標達成に必要不可欠なものからシステムや機能などを作ります。この不可欠な機能を絞り込むために、目標は明確化する必要があります。
緻密な計画は不要ですが、「最終的にどんな動作をしているか」「どんな状態であることを求めているのか」という、最低限の要件定義をすることは大切です。
②シンプルな基本機能を作る
次に目標達成に必要な基本機能を作ります。
基本機能は、デザインはもちろん、開発者が「あった方がいいのに」と思っている部分さえ省いた、最も単純かつ必要な機能のみを作ります。
その状態で使用者の反応を確認することで、「やはりその機能は必要だった」「意外と必要とされていない」といったフィードバックを得ることができます。
③ 継続的にクオリティを高めていく
スタートはシンプルな機能しかなくとも、検証とフィードバックを経て改良を加えていきます。これは一度ではなく、継続的に行う必要があります。繰り返すことでクオリティを高めていくのがアジャイルのポイントです。
まとめ:アジャイルな考え方でビジネスを進めていこう
アジャイルな考え方は、ソフトウェア開発のみならず、ビジネスで新しいことにチャレンジする際にも大いに役立ちます。
文中ではバックオフィス業務を例に挙げましたが、新しいサービスや新規事業の立ち上げなどにも活用できる考え方です。
小さく始め、状況に応じて修正・変更していくことができるアジャイル開発の考え方は、VUCAなこれからのビジネスにおいて欠かせない視点となるでしょう。
しかし、こうした考え方を持っているのが組織内でひとり、あるいは数人という状況では、ビジネスの推進力はアップしません。そんな際には、社内研修やセミナーを実施して、社内にアジャイル思考の考え方と実践方法を広く共有するのが一番です。
ロボフィスではアジャイル思考をはじめとしたフレームワークや、ITツールの使い方、それらの業務への活かし方など、業務効率化に関する研修サービスを幅広く提供しています。カリキュラムも会社の方針に合わせた内容をご提案しているので、翌日から業務の考え方・進め方が変わります。
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