「リーン・スタートアップ」は、プロセス管理を徹底して効率化することで、品質を維持しつつ、作業時間や在庫量を大幅に削減することを目指したマネジメント手法のことです。
ビジネス用語として耳にする方も多いと思いますが、この考え方がDX推進にも大いに参考になります。
本稿ではリーン・スタートアップとはどんな考え方かを説明し、なぜDX推進に役立つのかを解説します。
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リーン・スタートアップはなぜDX推進と親和性が高い?
リーン・スタートアップはマネジメント手法ですが、これはトヨタ生産方式(リーン生産方式※)をスタートアップ事業のマネジメントに落とし込んだものです。
※トヨタ生産方式が海外で紹介された際に「リーン生産方式」と訳されたため。
スタートアップ事業は多くの場合前例がなく、顧客ターゲットやニーズも絞り込めていない状況がほとんどです。
そのため、せっかく作りこんだ製品が実は顧客ニーズに沿っていなかったり、誰も欲しがらないサービスだったり、失敗した後で方向性の誤りに気づくことになりがちです。
それでは時間的・人的コストがかかりすぎるため、これを解決する方法としてリーン・スタートアップが世界的に注目されました。
そして、このスタートアップ事業に適したマネジメント手法が、DX推進にも効果的です。
なぜなら、DX推進の際も「前例がない」「効果があるかわからない」「誰が担当していいかわからない」など、手探り状態であることが多いからです。
また、一度DX推進を試み、うまくいかなかった企業にとっても「もっと早い状態でこの情報は得られなかったのか」という反省があるでしょう。
いずれの場合にも、リーン・スタートアップの考え方は参考になるはずです。
DX推進に欠かせないリーン・スタートアップ4つのステップ
リーン・スタートアップは、「仮説」「構築」「計測・実験」「学習」の4つのステップから成り立ちます。
①仮説:顧客ニーズの「仮説」を立てる。
②構築:そのニーズを満たすアイデアを構築する。そしてMVP(Minimum Viable Product)といわれる、最低限の機能しか持たない(実用最小限)製品を、時間・人・金銭的コストをかけずに開発する。
③計測・実験:流行に敏感な消費者に提供して反応をみる。ABテストなどを行う
④学習:その反応の結果を製品に反映させる。あるいは仮説を再構築する。
これをDX推進の現場に当てはめてみましょう。
仮説:「この書類をコピーする業務をなくせば○時間程、作業時間が削減できる」「担当者の心理的負担が減って他業務に対するモチベーションが高まる」などの効果があるだろう。
構築:書類のコピーをやめて、メール送信に変えてみる(すぐにできることから始める)
計測・実験:やってみて作業時間が何時間減ったのか定量的に計測する。あるいは担当者の心理的負担が減ったかインタビューする。
学習:思ったほどでなければ仮設の検証を行い、再構築する。期待通りであれば他部署に広げる。
このように小さく始めて大きく広げていくことで「全社的なシステムを導入したのに効果がなかった」「突然自動化をはじめて、社内が混乱した」といったトラブルを最小限にすることが可能になります。
DX推進に大切なのは、周囲とのコミュニケーション
リーン・スタートアップでDX推進を考えた場合、ポイントになるのは「計測・実験」のステップです。
仮説を立てる段階でも、「時間がかかって困っている業務はないか」といったヒアリングを行ったかと思います。
それが実現されたにも関わらず業務効率が上がらない、となった場合、最初にその業務の削減を挙げた方は責任を感じてしまい、つい「効果があった」と言ってしまうかもしれません。
ですが、現場の本音を聞き出すことはその後の効率化において大変重要な要素です。
正直な意見を聴き、改めて業務の棚卸しをしてみると、実際は自動化した業務の前段階の業務の方が問題で、自動化した業務はわずかな部分でしかなかった、という事実が見えてくるかもしれません。
そうすれば、その部分の自動化も試みることができます。
一方で、定量的に図ると時間効率はさほど向上していないけれど、「あの作業は憂鬱だったけれど、なくなって仕事が楽しくなった!」と担当者のモチベーションを大幅に変化させているかもしれません。
上記のようなケースは多くの企業で見られる光景です。自動化を進めるにあたって、社内のコミュニケーションは不可欠と言えます。
まとめ
●「リーン・スタートアップ」は、プロセス管理を徹底して効率化することで、品質を維持しつつ、作業時間や在庫量を大幅に削減することを目指したマネジメント手法のこと。
●リーン・スタートアップは、「仮説」「構築」「計測・実験」「学習」の4つのステップから成り立ちます。
①仮説:顧客ニーズの「仮説」を立てる。
②構築:そのニーズを満たすアイデアを構築する。そしてMVP(Minimum Viable Product)といわれる、最低限の機能しか持たない(実用最小限)製品を、時間・人・金銭的コストをかけずに開発する。
③計測・実験:流行に敏感な消費者に提供して反応をみる。ABテストなどを行う
④学習:その反応の結果を製品に反映させる。あるいは仮説を再構築する。
●リーン・スタートアップでDX推進を考えた場合、ポイントになるのは「計測・実験」のステップ。現場の本音を聞き出すことはその後の効率化において大変重要な要素だからです。定量的に図ると時間効率はさほど向上していないけれど、「あの作業は憂鬱だったけれど、なくなって仕事が楽しくなった!」と担当者のモチベーションを大幅に変化させているかもしれません。
DXと聞くと大きなプロジェクトをイメージしがちです。
しかしリーン・スタートアップの考え方で、「まずは自動化をはじめてみよう」と実際に行動し、周囲の声を聴きながら改善を進め、社内に広めていくことで、現場で活用できるDXを進めることが期待できます。
DX、またRPAなどの新しいデジタルツールを導入する際は、ぜひリーン・スタートアップの考え方で取り組んでみてください。
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